水泳肩

水泳肩とは?

水泳肩とは、水泳のストローク動作などにより、肩の関節に出る障害をいいます。特にクロールやバタフライなどような、腕を肩や頭よりも上に挙上する動作の反復で発症しやすくなっています。

症状

肩関節周囲の組織の炎症により痛みや可動域制限などがあります。

損傷の起こる部位により

  • 棘上筋腱炎
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 肩峰下滑液包炎
  • 関節唇損傷

など診断名は異なります。

棘上筋腱は肩峰下という肩関節のトンネルを通っており、ストローク動作などにより肩峰下で棘上筋腱や肩峰下滑液包が挟まり、炎症を起こすことをインピンジメント症候群といいます。

また、これらの症状は水泳のストローク動作に限らず、野球などの投球動作やバレーボールのスパイク動作などでも発症することがあります。

損傷部位や度合いにより症状の出方も異なります

  • 水をキャッチする瞬間の痛み
  • プル時の痛み
  • リカバリー時の痛み
  • 練習後の痛み
  • 動き始めの痛み

など。重度のものになると腕の挙上や着替えの際に痛みが出ることもあります。

水泳肩の原因

水泳肩の原因としては、多くは使い過ぎ(オーバーユース)によるものと言われています。肩関節の構造として、腕を肩よりも上に挙上する動作は関節に負荷がかかりやすいため、腕を挙上する動作の繰り返しにより関節内にある軟部組織の損傷につながるのです。

水泳肩に対する当院の考え方

はじめに、痛みや可動域制限などの症状が強い場合や長い期間それらの症状を抱えている場合などは、まず専門医への受診をおすすめします。その上でなかなか変化が出ない場合や、手術を勧められたが受けたくない場合などはご相談ください。

当院では水泳肩などの原因は、姿勢と動作にあると考えています。同じように水泳の練習をし、同じ距離・同じストローク数で泳いでも、水泳肩になる人とならない人がいます。この違いは何でしょう?

もちろん生まれ持った体格や体質の問題もあるかもしれません。ですが、身体は正しい使い方ができていれば、基本的にどこにも問題は起こらないはずなのです。仮に肩関節の構造が損傷を起こしやすいつくりになっていたとしても・・・です。身体を正しく使うための条件、それが正しい姿勢なのです。

水泳肩の症状が出た時、多くの医療者は水泳の練習を中止することを勧めるでしょう。もちろん損傷の度合いによっては休まなければならないこともあります。しかし、痛めた原因がストローク動作にあるということは、ストローク動作の中にしか改善方法はないはずなのです。

そこに向き合わず、痛めたのは水泳のせいだと、ただ練習を控え、痛みが引いたらまた泳ぐ・・・。それでは改善するはずがありませんよね?肝心の原因に向き合っていないのですから。痛めたのは水泳のせいではなく、その人の身体の使い方のせいなのです。

姿勢を正すことにより、各関節や筋肉のアライメントが整い、バランス良く正常な動作が可能になります。その状態で身体を使ってはじめてストローク動作は正常に行えるのです。

では姿勢はなぜ崩れるのか。これには呼吸の浅さが関わっています。呼吸が浅くなることで胸郭の動きは制限され、背中は丸くなり、肩甲骨は挙上します。この状態で泳ぐ動作を行えば、肩関節に負荷がかかることは間違いありません。

ではもっと掘り下げて、呼吸はなぜ浅くなるのか?これは単純な疲れもあるのですが、実は多くが不安や恐怖によるものなのです。何に不安や恐怖を抱いているかは人それぞれですが、悩みや不安を持たない人間はいません。自分が抱えている悩みや不安、恐怖などに気付かない人も多く存在します。それらの感情は息を詰めさせます。詰めた息が身を屈ませ、歯を食いしばり、余計な力を入れて踏ん張る。動物にとっての防御姿勢ですね。不安や恐怖に対して、人間は無意識に息を詰め、崩れた姿勢を取ってしまうのです。

「呼吸で水泳肩が本当に治るの?」と思う方も多いかもしれません。ですが経験上、水泳肩を含めたスポーツ障害を引き起こしている方の多くは何かに対する焦燥感や不安感、恐怖心を持っています。そしてそれを払拭しない限り、症状の根本的な改善もあり得ないと考えます。

水泳肩に対する当院の施術

水泳肩の根本的な解決策は、詰まった息を吐き出し、大きくしてしまった不安感や恐怖心を和らげること。それにより姿勢は改善し、身体は正しいポジションで動作が行えるようになるのです。

当然施術者だけでは、これらの改善は困難です。というよりも患者さん本人が自分の呼吸や姿勢の問題点に気付き、その上で自分でそれらを改善しない限り、根本的な解決はあり得ません。

原因が患者さん自身の呼吸や姿勢にある以上、これは当然ですよね?

したがって当院ではこれらの問題に患者さん自身が気付いていただけるよう、そして患者さん自身が改善していただけるよう、お手伝いをさせていただきます。あくまでも治す主体は患者さん自身にあるということだけは認識してください。

もちろん施術者が必要と判断した場合、筋肉の緊張緩和や骨格の矯正なども入れていきますが、決してそれがメインの施術になるわけではありません。したがって当院の施術は患者さん自身が自分で治すという強い意志と覚悟がなければ成り立ちません。